無歯顎における即時荷重補綴を成功に導くためのプロトコール

 近年,患者の肉体的・精神的負担軽減や治療期間の短縮などの観点から,インプラント埋入後に即時負荷補綴治療が行われるようになってきている.我々の施設において2004年より,連続した無歯顎患者に対するオリジナル治療プロトコールに基づいて実施された即時荷重症例について後ろ向きデータを取り,過去の当院での通常荷重症例を対象群として比較検討した.
 我々の行った無歯顎患者へのインプラント埋入即時負荷治療は,少ない被験者数(34症例),短い観察期間(平均36.2ヶ月)ではあるものの,現在までのところ今回の結果では 一回法インプラントでの生存率において,即時荷重を行った場合の方が通常荷重した場合より高い値(CSR100%)を示すという良好な臨床成績を得ている.
 今回はそのプロトコールと外科および補綴術式,合併症,配慮すべき点に関して報告する.


上顎に対するナビゲーションシステムへの検討

 上顎のインプラント治療は 骨量に乏しく骨質の脆弱な場合が多く、また鼻腔、上顎洞等解剖学的な制約を受けるため、移植等の様々な術式適応症の拡大がされてきました。しかし術式が煩雑になることに伴うリスクや治療期間の延長、経時的な骨吸収の問題があることも事実です。それに対して近年、ソケットエレベーション、傾斜埋入等の術式の確立や表面正常、ショートインプラント 歯根型インプラント等のマテリアルの開発から既存骨を応用した治療法も見直されてきています。ただし骨の限局した部位へ設計通りアプローチし正確に埋入することが要求されるのも事実ですが、未だなお術者の手指の感覚や経験によるところもあります。
 近年、より安全に確実にそして患者さんの負担軽減(低侵襲)な治療法としてCTデータを利用しナビゲーションを応用したガイドを用いた術式が多々報告されてきています。ガイドを用いた術式は設計通りの術野へのアプローチ、確実なインプラント埋入、即時義歯の事前の作製、後の補綴の設計が可能となります。またこのことは、ひいては予知性を高める治療になります。しかしその反面、応用法を間違えると大きなトラブルになりかねない懸念もあります。
 今回少ない症例ではありますが、私の経験したナビゲーションガイド(ダイナミック、スタティックの併用も含めて)の応用および適応症、問題点等症例を呈示し報告致します。一定の基準をもって、より科学的に治療をすすめることは単なる経験談におさまらず、今後のデータの集積、エビデンスの確立の為にも重要と思われます。