患者さんのハピネスを追求するために日々診療(取材3)

インプラントで社会復帰を助けたい

東海大学 昭和大学口腔外科では腫瘍切除後の再建の手術を担当、日本歯科大学では学生に講義もする。取材当日は、上顎洞癌手術後にインプラント埋入で顎顔面の再建を行った患者さんがケアのために訪れていた。癌の手術後8年間食事は流動物のみの生活を送られた。通常、このような患者さんは、家と病院の行き来だけで、あまり外出しようという意欲が起きないことが多い。しかしこの患者さんはインプラントによる顎顔面再建手術を受けてから何でもおいしく食べられるようになり、レストランにも行けるようになったという。
「医療の中で歯科医師しかできないことがあります。この方のように上顎がなくなると咀嚼嚥下ができません。インプラントで何かできるのではないかと10年間取り組みたどり着いた、でも医療にとっては1つの通過点だと思っています。患者さんが心身ともに元気を取り戻して、初めて治癒だと考えます。癌の手術をして生存できればよいのではなくて、その患者さんの社会復帰まで支援することが必要です。しかし今の日本の医療は退院したらそこでおしまいです。心の医療・ケアは、スウェーデンでは当たり前の医療になっていますが、日本では残念ながらまだまだ遅れていると思います。」

つまずいても転ばない医療の提供を
今日までに1500人以上の患者さんに約4000本のインプラント治療を行われた重原先生。「インプラントはチームワーク医療ですが、お互いを信頼することから起こるヒューマンエラーのリスクを少なくすることがとくに重要です。
将来、寝たきりや介助が必要になったときどうするのか。その対応も考慮して設計を行う。
「インプラントは今の生活をよりよくするためのものであることはもちろんですが、将来、設計変更がおこることもあるでしょう。その場合もネジ固定式にしておけば、一旦外して対応できます。もちろん審美性を重視していますが、10年先、20年先に壊れても対応できるシステムでなくては困ります。患者さんの将来を見越した、現時点での設計が出来ることが必要だと思いますね。」