「患者さん主導の包括的歯科治療」=木を見て 森を見て 季節をみる医療=
(エビデンスに基づいたナラティブなデンティストリー)
平成21年 7月15日(水)
水道橋  TDCビル2F・血脇記念ホール

 咬合回復に優れ、違和感が少なく、予知性も高く、多くの患者さんにおいて満足度が高く、QOLの回復・向上に貢献していると言われるインプラントを、1992年に臨床応用して以来、1,000人以上の患者さんに用いてきました。しかし、インプラントは、あくまでも治療の選択枝(オプション)の一つであり、それがすべてではありません。義歯やブリッジで充分満足される場合もあれば、欠損部を歯牙移植や矯正治療を応用して、またそれらを複合して咬合回復を行う場合も多々あります。患者さんの要望と状況によっても治療方針は異なってきます。
 特に移植・矯正・インプラントは欠損補綴を変えること(咬合支持数の増加)のできる治療法として有用であり、状況によっては残存歯に負荷をかけることなく治療のゴールに到達することができます。そして、このことはひいては天然歯の保護、咬合崩壊の予防、予知性を高めることになります。QOLの向上、アンチエイジングもその範疇にあります。しかしあまりにも治療のゴールの設定を高くしたり時期を誤ると、治療中、不測の事態に対して自らリスクを抱えたり、信頼を失う事になりかねません。また患者さんの希望は治療が進むにつれて変わっていくことも臨床ではよく見られる光景です。
 今回は、日常臨床の中で欠損補綴を補う方法としてのインプラントの位置づけ、また他の治療法との選択の基準、そしてそれは、いつ、どのようにして行っているか。さらに、限られた条件(期間や費用等の制約)のなかでは何を、どのように応用しているか、天然歯との共存にはどのような配慮が必要であるか、またその他に。
  咬合回復だけではなく天然歯保護の為のインプラントの用い方
  インプラントの他の分野(矯正等)への応用
  長期症例から学ぶインプラントの効果
  歯科医療のもたらすウエルカムエイジングの実践
などの内容にも踏み込んで、インプラントの光と影についても皆様と一緒に考えたいと思います。